「氷水」に違和感、指名を断る動きも チャリティー流行の意義は
難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の研究支援を目的に、頭から氷水をかぶるという米国発のチャリティーが世界中のネットでブームになっている。日本にも伝わり、挑戦する著名人の映像が動画サイトなどで続々と登場。一方、次の挑戦者を「指名」する手法などに違和感を指摘する声も多く、慈善活動をめぐる議論の“呼び水”にもなっている。
注目を集めているのは「アイス・バケツ・チャレンジ」と呼ばれるチャリティー。ネットの交流サービスなどで指名された人が(1)氷水をかぶる(2)関係団体に寄付する(3)その両方-のいずれかを選び、次の挑戦者を3人指名する慣例が広がっている。
米国で7月ごろから流行し、マイクロソフトのビル・ゲイツ元会長やブッシュ前大統領も挑戦。今月中旬からは日本人も相次いで参加し、京都大の山中伸弥教授やソフトバンクの孫正義社長ら各界の著名人、さらには「くまモン」などのゆるキャラも動画を公開して話題になった。
◆「善意の押し売り」?
“大物”が氷水をかぶる映像が拡散するに伴い、ネットでは「全く知らなかったが、ほんの少しだけALSのことを知った」(ツイッター)との声が拡大。米ALS協会には今月22日までの約1カ月で5330万ドル(約55億円)、日本ALS協会にも今月18~27日に2010万円の寄付が集まり、奇抜な仕掛けが難病の周知に一役買ったのは確かなようだ。
ただ、チャリティーには「ALSと氷水をかぶることの関係が分からない」(同)などと批判も寄せられている。挑戦者が他人に氷水か寄付かの選択を迫る方法にも、チェーンメールや不幸の手紙との類似性が指摘され、「善意の押し売りのようだ」と抵抗感を訴える声も目立つ。
また、米国でははしご車を使った挑戦に協力していた消防士4人が事故で負傷。英国では参加者が池に飛び込んで溺死したとの報道もある。日本ALS協会は「全て強制ではありません」と強調。ネットでは「周知に乗じたバカ騒ぎはしてほしくない」(ツイッター)として、ブームでパフォーマンスの側面ばかりが注目され、本来の趣旨が埋没することを危惧する声も出始めている。
◆指名を断る動きも
興味深いのは、ブームが進展するにつれて、指名を断ったり戸惑いを隠さず表明したりする著名人の動きが注目、評価されてきたことだ。
タレントの武井壮(そう)さんはツイッターで、他に医療費が公費対象となっていない難病があり、「自分の思う優先順位で寄付する先、金額を決めている」と説明。歌手の鬼龍院翔(きりゅういんしょう)さんはチャリティーに「形容し難い違和感」を覚えたとブログで告白。それでも寄付する意向を示した上で、「ツアー中でかぜをひけない」「しかし寄付だけではパフォーマー魂がすたる」として墨汁をかぶった。
最近では氷水→指名という慣例に従った人より、かぶらずにチャリティーへの持論を率直に語ったり、指名を自分のところで止めた人の方が評価される流れにある。こうした動きが影響してか、ツイッターでは「ALSを知る機会をくれたことに感謝しつつ、今回は広島の土砂災害被害に対する寄付にさせてください」といった投稿も出てきた。
今回の「氷水」への違和感が、チャリティーについて改めて考えさせ、慈善活動の成熟のための“一滴”になったなら、ブームの意義はあったというべきだろう。(三)
【用語解説】筋萎縮性側索硬化症(ALS)
身体を動かす神経系が障害を受ける難病で、症状が進むと手足など身体の自由が失われ、食事や呼吸も十分にできなくなる。現在のところ発症原因は分かっておらず、治癒のための有効な治療法も確立されていない。難病情報センターによると、日本国内には特定疾患医療受給者数から見て約9千人の患者がいるとみられている。
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