夏の甲子園、逆転劇なぜ多発 センバツ王者初戦敗退の波紋
今夏の高校野球は逆転劇が多かった。
一回に8点を先行された大垣日大(岐阜)は12-10で藤代(茨城)に逆転勝ち。8点差をはね返したのは1997年の市船橋(千葉)に並ぶ大会記録だ。山形中央は3点を追う土壇場の九回に4点を奪い、小松(愛媛)戦に9-8で勝った。49代表校の初戦25試合で先取点をとられたチームが勝ったのは13試合。昨年は9試合だった。なぜ“ルーズベルト・ゲーム”、すなわち打撃戦の末の逆転劇が多くなったのか。
開会式直後の第1試合、センバツ優勝の龍谷大平安(京都)が1-5で春日部共栄(埼玉)に敗戦。この試合が大きな意味を持っていた。
甲子園を知り尽くす明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督はこの敗戦に「今年はビッグイニングが多い大会になる」と感じたという。ビッグイニングとは大量点が記録されるイニングで一般的には5点以上とされる。
馬淵監督だけではない。「ビッグイニングに気をつけたい」と話す監督が多かった。野球では「流れ」という言葉がよく使われる。一種の集団心理だ。4点リードでも「あの龍谷大平安でも5点とられた」と不安になる。逆に4点ビハインドでも「5点をとれる」と強気になれる。「不安」と「強気」が交錯し、小さなきっかけで一気に流れが反転する。そうした試合が増えるにつれ、ますます選手心理は揺れ動く。数多くの逆転劇を生んだ理由の1つだろう。
技術的には、投手分析などの向上が挙げられる。野村克也氏がデータを重視する「ID野球」を掲げ、プロ野球ヤクルトの監督に就任したのは1990年。それから24年、高校野球のID化は着実に進んでいる。審判のストライクゾーンの傾向までデータ化しているチームもある。
打線が一巡すると投手の配球は丸裸にされる。投手は相手打線の対応をみて配球を変える必要がある。しかしイニングの途中で配球を変えることは高校生には難題だ。集中打を浴び、動揺している中、原因が配球にあると気付くまでには時間がかかる。その間にビッグイニングが作られる。
野球は27のアウトをどう取るかという競技だ。高校野球もプロ野球並みに終盤の6つのアウトを取ることが難しくなっている。逆転劇が多い今大会を機に、クローザーを置くなど、投手の継投を基盤にしたチーム作りをする学校が増えてくると思う。
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