次のブームは? “変わりうどん”が流行る日
うどんの本場「香川県」から大手外食チェーン店が生まれていないが、ラーメン業界はどうなのか。香川大学大学院の高木准教授に話を聞いたところ、意外な事実が。それは……。
●ラーメン業界を分析
土肥: 前回は「なぜ、うどんの本場・香川県からチェーン店が誕生しないのか?」――その理由をうかがいました。香川県以外の人はうどんを食べ慣れていないので、うどんの違いがよく分からない。「このうどんはいりこの味がきいているなあ」という人はあまりいませんものね。全国展開を目指している「経営者」は、県外の人をターゲットに「必要にして十分」なうどんを提供している。
一方、香川県民はうどんを食べ慣れているので、こだわりが強い。「このうどんの出汁は絶妙だ」などと口にする人が多い。なので、個性の強いうどんを提供する「職人」の店を好むんですよね。それでいて値段は安い。そんな特殊な市場なので、チェーン店はなかなか展開できなかった。
うどんを効率的に提供する「経営者」と、こだわりの強いうどんを提供する「職人」とは、考え方が全く違う。こうした背景があって、本場の香川県からチェーン店が生まれなかったという話をしていただきました。そして、うどんだけではなく、ラーメンも分析したところちょっと興味深いことが分かってきたそうですね。
高木: うどん業界のチェーン店をみると、トップの丸亀製麺の売上高は783億円(774店舗、2014年3月末)、はなまるは230億円(330店舗、2014年2月末)。この2社がズバ抜けていて、3位以下で売上高が100億円を超えているところはありませんし、店舗数も100店を超えているところはありません。
一方、ラーメン業界をみると、幸楽苑の売り上げが最も多く372億円(518店舗、2014年3月末)、次いで、日高屋が319億円(341店舗、2014年2月末)。このほか、上位10社すべてが100店舗を超えているんですよね。
大手うどんチェーン店はすべて香川県以外の企業ですが、ラーメンチェーン店はどうなのか。幸楽苑は福島県で創業して、いまも本社を置いています。福島県はラーメンの外食費用が高く、喜多方や白河など「ご当地ラーメン」もあるので、“本場”と言えるでしょう。
しかし、日高屋(ハイディ日高)は埼玉県、とん太(秀穂)は千葉県、丸源(物語コーポレーション)は愛知県にそれぞれ本社を置いています。この3県の1人当たりの年間ラーメン外食費(総務省家計調査2013)をみると、埼玉県が5834円、千葉県が5714円、愛知県が5782円。ちなみに、全国平均が5492円なので、やや多いくらいで、“本場”とは言えません。来来亭の本社は滋賀県なのですが、ここのラーメン外食費は4026円とかなり低い。
●ラーメンは「分散型事業」
土肥: つまり、うどん業界と同じように、ラーメン業界も“本場”からはチェーン店が生まれていないと?
高木: 幸楽苑を除いて、ですね。大手ラーメンチェーン店をみると、売上規模は200億~400億円ほどでそれほど離れていません。しかし、収益力はまちまち。例えば、最大手の幸楽苑の利益率は2003年から下落傾向です。1店舗当たりの平均売上高は2002年の1億1300万円をピークに下がり始め、現在は7400万円。なぜこれほど経営効率が下がったかというと、幸楽苑は“安売り競争”に巻き込まれてしまったんですよ。
当時の経営者は「ラーメンを値下げすれば、集客力がアップするので、売り上げがアップする」と見込んでいました。しかし、いざフタを開けてみると、原価率の高いラーメンに注文が集中したので、業績が悪化しました。
ラーメンの安売り競争で思い出されるのが、1997年に創業した「びっくりラーメン」。フランチャイズを中心に2005年には189店まで拡大したのですが、それ以降業績は悪化し、2007年に吉野家ホールディングスに買収されました。しかし、再建がうまくいかず、2009年に清算されました。
土肥: ラーメン1杯が189円でしたね。
高木: 幸楽苑はラーメンの価格を安くすることで業績が低迷したのですが、その一方で日高屋は好調なんですよね。この4年間の営業利益率は12%前後を維持しています。ちなみに、幸楽苑は2.4%で大手4社の中で最も低い。日高屋の1店舗当たりの売上高は9000万円を上回っているのですが、なぜ好調なのか。ラーメンの価格は安くせず、夜の居酒屋でもうけているんですよね。
土肥: なるほど。
高木: うどんの大手チェーン店をみると、規模が大きければ大きいほどもうかる「規模型事業」なんですよ。なぜこうした傾向になったかというと、うどんの出汁は魚介系のみなので単純。そのため、規模の経済が出やすい。
一方のラーメンチェーン店については、小規模経営の店がひしめく「分散型事業」。うどんと違ってラーメンは、麺の種類、スープの材料、元ダレ、香味油、トッピングなど競争変数が多く、いろいろな組み合わせが可能。なのでそのぶん差別化がしやすく、「自分もラーメン店を経営したい」という人がいまでも多い。
●うどんチェーン店の未来
土肥: ここでラーメンからうどんの話を中心に聞かせてください。うどん業界って、今後どのようになると思われますか?
高木: 大手チェーン店の最大の功績は「讃岐うどんを広めてくれたこと」だと思っています。丸亀製麺やはなまるが先頭を切って、讃岐うどん市場を開拓してくれたことで、本格的なうどん店を増やせる土壌ができたのではないでしょうか。
土肥: それはどういう意味ですか?
高木: 例えば、関東の場合、チェーン店ができるまで、多くの人はうどんを食べる習慣がありませんでした。でも、会社や家の近くにチェーン店ができたことで、讃岐うどんを食べるきっかけができました。そして、実際に食べてみて「あ、おいしんだ」と気づかれたのではないでしょうか。
そうした層を対象に、今後はこれまでにないうどんを提供すると、ヒットするかもしれません。競合のない市場に出ていくのは簡単と思われるかもしれませんが、実は自ら市場を開拓しなければいけないのでリスクが高い。先ほどもご説明したとおり、ラーメンと違ってうどんには種類が多くありません。なぜラーメンにバリエーションがあるかというと、既成概念がなかったからだと思うんですよ。
土肥: 既成概念?
高木: ラーメンが日本にやってきたのは、明治時代になってから。当時の日本人にはあまり馴染みのない中華料理をベースにラーメンが生まれたので、既成概念がないんですよね。
土肥: 「ラーメンはこうでなければいけない」という考えのことですか?
高木: はい。ラーメンが生まれてから、その後各地でさまざまな種類のラーメンが誕生しました。出張に行ったときに、ご当地ラーメンを食べることを楽しみにしているビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。しかし、うどんにはバリエーションが乏しいので、出張先や旅先で「ご当地うどんを食べよう」という人は少ないですよね。でも、うどんチェーン店がうどんの味を広めてくれたおかげで、今後はさまざまな味が増えてくるかもしれません。
土肥: うーん……でも、とはいえ、うどんですからねえ(既成概念の塊)。
●「とんこつ」「トマト」味が人気
高木: いま、香港でちょっとしたうどんブームが起きているのですが、どんな味だと思いますか?
土肥: どんな味って、きつねとか天ぷらではなくて?
高木: 最も人気があるスープは「とんこつ」で、次が「トマト」なんですよ。
土肥: そーいえば、なか卯が「豚カルビとんこつうどん」を期間限定で発売していました。なか卯は“変わりうどん”に力を入れていますが、今後、日本でもこうした動きが広がるかもしれませんね。それにしても「とんこつ」だったらラーメンを食べていればいいし、「トマト」だったらパスタを食べていればいいのでは。
高木: それが既成概念なんですよ。香港の人たちは日本のうどんを食べたことがなかったので、「うどんはこうでなければいけない」という考えがない。なので、とにかくおいしければ、スープの味はとんこつやトマトでいいんですよ。
土肥: 昔、日本でラーメンが普及したときと同じことが、香港でも起きているわけですね。
高木: はい。ただ、ひとつ懸念があるんですよ。特に、うどんは「本場(香川県)であるがゆえに産業化ができていない」ことを説明させていただきました。では、この問題を「和食」で考えてみるとどうでしょうか。
和食は2013年に世界遺産に登録されたこともあって、世界中でいまブームが起きています。でも現地の日本食レストランの多くは、日本人が経営していません。
土肥: 米国に行ったときには「TERIYAKI」と書かれた看板があったので、店に入ってみると、日本で見たこともない料理が出てきました(笑)。
●「和食」を産業化しなければいけない
高木: 和食と言えるのかどうか怪しいモノが世界中にあふれているんですよ。香川県がうどんを産業化できなかったように、日本が和食を産業化できないかもしれません。同じようなことが起きないために、何らかの戦略を練る必要があると思っています。現地で経営することが難しかったら、ライセンス料をもらうことはどうでしょう。例えば、熊本県にある味千ラーメンは、中国で500店舗ほど展開していますが、現地の経営は地元の人に任せて、会社はライセンス料をもらっているんですよね。
このほかにも、食材を供給するという方法もあります。「和牛」といえば、日本で生まれ育った牛を想像しますよね。でも、世界では「オーストラリア産」と認識している人が多いんですよ。それはさすがにマズいだろうということで、日本で「和牛協会」をつくって、日本産和牛を世界で売ろうという動きが出てきました。
このようにできることから始めていかないと、どこかの国のどこかの企業が「和食」をうまく使って、産業化するかもしれません。
土肥: “第二の香川県”をつくらないようにしなければいけませんね。
高木: そのためには、業界が率先して、和食のビジネスモデルをつくっていく必要があると思いますね。また、国にも支援してもらいたい。
土肥: なるほど。日本人が食べたことがない和食を外国人が食べて、「さすが和食! 世界遺産に登録されただけのことはあるねえ」と言われるのは嫌ですよね。本日はありがとうございました。
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