ウソ? ホント? 妊娠・出産で歯がボロボロになる
体を見直すセルフケアが大切
35歳以上でこれから妊娠を望んでいる方の中には、「子どもはいずれ欲しかったけれど、仕事も忙しく、チャンスに恵まれなかった。これからは本気で取り組みたい」と思っていらっしゃる方も多いと思います。
これから赤ちゃんを授かりたいという方に私がアドバイスしているのは、自分自身の体を見直してみるセルフケアの大切さです。「高齢出産」をひと括りにしてリスクだけに目を向けさせるのは好みません。何度も申し上げますが、「高齢だから難産になる」というわけではなく、それは個人差が大きいのです。
しかし、個人差といっても、「食事の内容に気を配り、適度な運動をしつつ十分な休養をとれている人」と、「忙しさにかまけて外食やインスタント食品ばかり、ダイエットを繰り返して栄養が偏っている人」、「運動や休養も十分でなく、不調を感じることが多い人」を一緒くたにすることはできません。後者であれば、たとえ年齢が35歳以下であっても、妊娠・出産に関するリスクは高くなってしまうかもしれません。
ご自分の体、生活習慣を見直して、妊娠できる体作りのためのセルフケアをしていきましょう。
■妊娠中は歯のケアが行き届かないことも
まだ出産のご経験のない方から「妊娠・出産でお母さんはカルシウムを奪われるから、歯がボロボロになるって本当ですか?」と聞かれることがあります。
栄養が行き届いていなかった時代であれば、赤ちゃんに必要なカルシウムを補うために、母親の歯のカルシウムが溶け出すといったこともあったかもしれませんが、今の時代、普通の生活をしていれば、栄養を奪われるから歯がボロボロになるということはありません。
歯が痛くなることがあるのは、妊娠初期のつわりのときに、歯ブラシを口に入れると気持ち悪くなったり、歯磨き粉のにおいを受け付けなくなったりして、歯磨きが行き届かずに虫歯になるからでしょう。虫歯菌は眠っている間に繁殖しますが、つわりの間は、少量食べてはそのままウトウトの繰り返しで、口の中をケアできないまま眠ってしまうことが多いせいもあります。
また、妊娠中には歯科検診の案内が届くと思いますが、口の中に少々気になる症状があっても「妊娠中は薬を使ってはいけないから、歯医者にはいかない方がいい」と思っているうちに悪化してしまった、ということもあるかもしれません。
さらに、歯周病を起こす菌の中には、女性ホルモンを好む細菌がいて、女性ホルモン値が高くなる妊娠中に、歯茎の炎症を起こしやすいということもあるようです。
いずれにしろ、出産後は育児で手が離せなくなり、治療はさらに遠のきますので、歯が痛い場合は歯科医に「妊娠している」ことをしっかり告げて、対処しましょう。
■30歳代後半から罹患率が上がる歯周病は早産リスクが7.5倍!
口の中の健康に関しては、妊娠・出産以前に気を配っておくことが大切です。とくに肝心なのは歯周病の予防です。歯周病は、20歳代よりも30歳代後半になってから、急激に罹患率が上がります。
近年になって、歯周病に罹っていると糖尿病や肺炎、心筋梗塞などのリスクが高くなるということも盛んに警告されていますし、アメリカでは「歯周病は早産の危険因子の1つ」という研究報告が発表されました。妊娠37週未満で生まれた早産の人、2500g以下の低出生体重児を出産した人たちの中には、歯周病が進行している人が大勢いたのです。早産になってしまうリスクは、歯周病でない人の7.5倍もあるということです。
これは一般的に早産のリスクが高まる原因として挙げられる、タバコやアルコールなどよりも高い数字。さらに最近、重い歯周病が流産に関連している可能性も指摘されているようです。
この研究はまだ途上であり「歯周病と早産の関係はなかった」という報告もありますが、いずれにしろ、「歯の健康は全身の健康につながる」ということを肝に銘じて、ケアをすることが大切です。
■歯を全部治してからでないと産めない?
かといって、歯の悪いところをすべて治療してしまわないと妊娠してはいけないというわけではありません。「噛み合わせが悪いと流産するから、矯正治療が終わってから妊娠のことは考えなさいと言われたのですが」とか、「妊娠のスタンバイをしていくより、歯を完全に治すことの方が先でしょうか」と悩まれている方の声を時々聞きます。
歯の治療や噛み合わせの矯正とはいっても、その人にとってどれだけ急を要するのかで話は変わりますが、そこまで歯のことにこだわりすぎるのもどうでしょうか。高齢でも授かることを望んでいる方が、妊娠のチャンスを逃してしまう可能性もあります。私は高齢出産をしようと思っている方の後押し、励ましはしていますが、「高齢出産できるから」という理由で出産を引き伸ばすことをおすすめできません。
そのあたりはバランス感覚を持って、歯周病などの重い病気の場合は治療を優先し、一通りのケアができているようであれば「おめでたスタンバイ」という態勢にもっていって欲しいですね。
■マウスウォッシュや歯磨き粉は使いすぎない
さて、セルフケアという部分では「歯磨きをきちんとする」ということが大事です。ただし、「歯磨き粉をたくさん使って磨いて、口の中はサッパリ」「常にマウスウォッシュで口をゆすいでいるので大丈夫」という方は、ケアの仕方を見直す必要があります。
歯磨き粉はあくまで補助的なもの。私は、歯磨き粉は使わずにブラッシングだけでケアをしていますが、それで十分だと思います。歯磨き粉を使うと口がサッパリする分、ブラッシングが行き届いていない人も多いそうです。また、マウスウォッシュを使いすぎると、口の中の必要な菌までいなくなって、ベストな口内環境が保てません。また、歯磨き粉やマウスウォッシュの成分は、体内に入って有益なものばかりではありません。
虫歯は砂糖が多いお菓子類や噛み応えのない食品ばかり食べていると増えるものです。一方、食物繊維の多い野菜など、噛み応えのある食品は唾液を多く分泌し、繊維が歯の隙間を掃除する役目も担ってくれます。歯のケアと同時に、体によい食事を心がけることも大切です。
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