ドルトムント復帰は“運命”だった。香川真司、不運の2年間と古巣の絆。
8月31日、香川真司のボルシア・ドルトムント再移籍が決まった。マンチェスター・ユナイテッドでの「チーム構想外」が伝えられたのは、プレシーズン中の7月後半。「ナンバー10タイプが4名。チームのバランスが悪い」という、ルイス・ファンハール新監督の発言を受けてのことだった。
その4名のうち2名は、ウェイン・ルーニーとフアン・マタだ。両者は、新監督がロビン・ファンペルシと並ぶ「前線の主役」と位置付けているとされた。他の1名はアドナン・ヤヌセイ。1軍昇格2年目の19歳は、トップ経験は浅いが4名中最高の突破力がある。必然的にマンUから発散された香川放出の匂い。ナポリ、アトレティコ・マドリー、バレンシアといったクラブの興味を引いたが、4年契約でドルトムントへの「帰還」に落ち着いた。
香川真司
プレミア挑戦が失敗だったと言われても仕方ないが……。
移籍決定の数日前から、香川のUターンを「たった2年間で」と報じていた国内メディアに言わせれば、ドルトムントへの「退散」ということになるのかもしれない。実際、プレミア挑戦に失敗したと言われても仕方はない。
選手の査定額である移籍金は、マンUに買われた際の半額ほどの630万ポンド(11億円弱)に値下がりした。売り戻し前の今季開幕2試合は、いずれもベンチ観戦。昨季はリーグ戦18試合出場で無得点。リーグ優勝を経験したプレミア1年目にしても、20試合出場6ゴール3アシストという数字は、戦力ではあっても主力とは見なされないレベルだ。
渡英が失敗に終わった外国人に指摘されがちな「強度不足」が確認された事実も否めない。この観点からすれば、昨季3月の時点で香川の挑戦は終わっていたようなものだった。
オリンピアコスとのCL決勝トーナメント1回戦第2レグのことだ。デイビッド・モイーズ前監督の早期解任が現実味を帯びた直後の一戦は、その3日前のリバプール戦惨敗で国内トップ4争いからも脱落が濃厚となったチームにすれば、CL8強入りだけではなく、プライドを懸けた一戦だった。そして、CLグループステージにチェルシーで出場していたマタの起用が許されない欧州での戦いでもあった。
しかし、香川に出番はなかった。勝利の立役者となったファンペルシとルーニーのサポート役は、ダニー・ウェルベックとアントニオ・バレンシア。マタに引けを取らない香川の巧妙さではなく、守備にも加勢できる馬力が必要とされた結果だ。
新システム、香川真司負傷、3部に大敗と続く不運。
ファンハール就任で状況は好転するかに思われた。新監督が好む足下で素早く繋いで攻めるサッカーのスタイルは香川に向いている。だが、ウィンガーとSBに真の一線級がいないチーム事情を考慮した結果なのだろうが、基本システムが3-4-1-2に変更された。ウィングバックはもちろん、センターハーフとしても機能が難しい香川にとっては、マタが君臨するトップ下の控えに甘んじるしかないシステムだ。
香川真司
不運の極めつけは、ファンハールに今季初出場の機会を与えられた8月26日のリーグカップ戦。トップ下で先発した香川は前半20分に負傷退場を強いられた。しかも、マンUは3部リーグのMKドンズに大敗(0-4)。指揮官に与えた印象は、屈辱の敗戦で戦力にならなかったという類だっただろう。香川にとっては不運と苦渋に満ちた2年間を象徴するような、マンUでの最終戦となった。
香川とドルトムントの「絆」は薄れていない。
運も実力のうちと言われるが、自力では如何ともし難い状況を改善するには、環境自体を変えるしかない場合がある。「帰還」による変化の前例には、一足先にレンタルでクリスタルパレスに戻ったウィルフレッド・ザハがいる。
21歳のFWは、ファーガソン時代の昨年1月にマンU入りが決まったが、いざ入団してみたらモイーズ体制下でほぼ無視に近い扱いをうけた。昨季前半戦は2試合出場のみで、後半戦は最下位で降格したカーディフに預けられる始末。ユース上がりの古巣に残っていれば、主力として通年でプレミアのピッチを経験できていたはずだ。成長期の1年を無駄にし、無得点に終わったザハには精神的ダメージも心配された。
だが、クリスタルパレスに復帰しての初戦、今季初出場となった第3節で、ザハには土壇場の同点ゴールという幸運が待っていた。
香川とドルトムントを結ぶ「絆」の強さは、ザハとクリスタルパレスにも負けていない。2年前に涙で別れを惜しんだユルゲン・クロップ監督といい、マンUからの「シンジ解放」を訴え続けたファンといい、相思相愛の状態だ。帰還を告げるクラブの公式ツイートには、タッチライン際で向き合うクロップと香川の写真に「帰ってきた!」の文字があった。
香川はドルトムントに戻る運命にあった。
現在のドルトムントにおける香川の必要性を疑問視する声もあるが、昨年加入のヘンリク・ムヒタリアンと、一昨年加入のマルコ・ロイスを香川の左右に並べる2列目は現実的だ。ロイスは香川の後釜的な存在で、一昨季のCL決勝でもトップ下を務めた逸材だが、それだけに引抜きの噂が絶えない。最終的にはロイスの後釜としての先代復帰という位置付けもあり得る。
2年前、ドルトムントの公式サイトで「プレミアでの夢を実現したかったから」と、マンU入りについてコメントした本人には、「夢破れた」という気持ちがあるかもしれない。だが、プレミア挑戦に「敗れた」とうつむくことはない。香川はドルトムントに戻る運命にあった。そうとしか思えない2年間だったのだから。
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